財団法人広島市文化財団は市民の自発的創造的な文化活動をもりあげ、魅力ある広島の文化を創造します。


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短歌
 ここに掲載した「文芸結社・団体の活動状況」は、平成21年11月末発行の「文芸ひろしま 市民文芸作品集第26号」に掲載した「文芸結社・団体の動向 平成19年4月〜平成21年3月」を転載したものです。ただし、文芸結社・団体の希望により、掲載していないもの、また、一部変更したものがあります。


          青嵐

代表者 松永 智子
連絡先 広島市中区幟町10−3−601  電話 082−228−9382

 青嵐は地中海(創刊 香川進)に所属し、昭和40年に発足。備後・安芸・周防の3グループから成る。
 平成19年4月から平成21年3月のあいだに、「青嵐」を75号から80号まで発刊。
 連載として、3号以来つづく松永智子の”思いつくまま”、75号から中須賀美佐子の”前田夕暮ところどころ”。また、昭和40年代「地中海」誌上に掲載された香川進の”万葉旅行ノート 海と山と川への思慕”を転載中。現地に立つ感覚のみずみずしさと詩情豊かな筆致が好評。75・76号では”特集 わが町をうたう”(74号より3回連続)。歌と小文により、会員それぞれのわが町をうたい、おもいを綴った。平成20年5月に地中海全国大会(山口大会)を青嵐が担当。78号に、その”全国大会記”と”大会点描”をのせる。各号より作品を――
 日の光あふるるひろみに誰も居ずしんかんとして空のありたり・・・・ (No.75)松永 智子
 この胸に見たのは絶望などでなく真綿に閉じこめられる幻想・・・・ (No.76)浜田 幸恵
 豆腐屋の水槽に沈む絹一丁女主人が泳がせすくう・・・・ (No.77)檜垣美保子
 風が匂う雨のまえぶれ色あせた吹きながしだけが空を泳ぐ・・・・ (No.78)三木 まり
 いなびかり一閃走りわが暗愚みごと照らさるみごと撃たるる・・・・ (No.79)若松 喜子
 筆箱に入れっぱなしになっている明日を切り出すための小刀・・・・ (No.80)岡田 万美
 平成20年第51回〈短歌研究新人賞〉(30首)に応募の田中敬人。「短歌研究」9月号に新人賞予選通過作品として2首の掲載。また、同10月号に第26回〈現代短歌評論賞〉(課題 あたらしい相聞を考える――現代短歌史上の問題としてとらえる)の最終選考通過作品の題名と氏名「エロスの矢印 岡田聖子」が掲載される。平成21年3月、佐々野直樹が第2歌集『黄金の地球(テラ)U』を出版。
 その他の活動として、3グループが独自に歌会をもち、松永の指導をうけ、作歌研鑽につとめる。「互いに影響しあう仲間である」ことを基本姿勢に、「個の確立を指向する」を理念としている。また、毎月松永による「青嵐たより」と各担当者による諸連絡。
 行事 年1回親睦をかねた新年総会。平成19年5月、秋芳洞・秋吉台へ吟行。これは翌20年5月の地中海全国大会下見のため。
 この期間、この大会にかかわる活動が多く、会員相互の交流を深めることができた。


         

代表者 行本 昭子
連絡先 広島市安佐南区安東四丁目15−24  板倉方  電話 082−878−5084
ホームページURL http://www.geocities.jp/akanetankakai/

 『茜』は『地中海』…前田夕暮→香川進…に所属。会員数50。「生きるとは何か、人間とは何か」をテーマに19、20年度は、短歌と評論誌『茜』…季刊…50ページを46号から50号まで発行。
 連載中の柏原宗一の「香川進先生随伴記…19〜23」は、新しい会話形式の評伝として、今は亡き師香川進を彷彿とさせると好評。
 「言葉の発見」「知るということ」「価値の共有」「弱者排除の世に」「言葉に力を」は行本昭子の毎号の巻頭随筆。「メコン渺渺…6〜10」はあまり知られていないラオスについての牧雄彦の毎号のエッセイ。月刊『あかね通信』は、全国大会、各地区歌会の報告、高点歌の紹介等、257号から275号まで発行。
 研修は『地中海』新春大会(東京・大阪)、全国大会(東京・山口湯田)へ参加の他、50号記念研修会を他県の講師を招いて「県民の森」にて開催。毎月の合評会は広島市・三原市・三次市・庄原市にて開催。
 その他、行本昭子の日本短歌協会理事就任、地元月刊誌の短歌欄担当、小学校の短歌授業、短歌大会の選者担当など。

会員作品
 ・永らへて見てこし人のうら表なれどひとりの涙にて足る・・・・行本 昭子
 ・話題なき老いのふたりが笑い合う小さき犬の仕草ひとつに・・・・世木田照比古
 ・軒近く天然記念物の老い桜わずかの花の清らに咲ける・・・・小松千賀子
 ・縁ありて親と呼びたる六人をすべて送りて肩のさみしさ・・・・暮町 キヨ
 ・わが歳と同い年なる古時計煤けながらも共に生き来し・・・・関広イチヱ
 ・魂の違えばかくも見る景色全て違うを子に教えらる・・・・深居 久枝
 ・海底の戦艦「長門」を映しおり1300余名のみ魂よ安かれ・・・・紺谷 宏子
 ・退院の準備できたる媼あり帰れる筈が受け入れ先なく・・・・伊藤 教子
 ・幼き日「勝って勝つの」と泣きし娘(こ)も負けるが勝ちよと子を諭しおり・・・・小川百合枝
 ・亡き夫の声はなけれどわがかたえに励ましくるる想い伝わる・・・・能方 幸子
 ・告知せずだまし続けるこのわれを疑うことなくやすらかな夫・・・・速水 一榮
 ・かたわらの連れ合いとなる人かばう息子は夫の若き日に似て・・・・吉本 一恵


          火幻

代表者 豊田 清史
連絡先 広島市東区牛田旭二丁目2−2−7  電話 082−228−0063

 平成19年4月から21年3月の間に、結社誌「火幻」を197号から200号まで発刊。200号は21年1月に創刊50周年特集号として発刊した。
 主な作品は
 靖国の宮に静まる永久の君といえども死は淋しかる・・・・豊田 清史
 わだつみの怒涛の向うは父の死地寒ざむ濃ゆきシベリヤの見ゆ・・・・木村佐和子
 かき筏のふかき寡黙をほどきつつ朝日は徐々に波輝やかす・・・・西岡喜美子
 営々と休刊もなく50年火幻誌二百号の発行を祝す・・・・豊原 国夫
 沈みゆく奈落の闇に打つ手なく麻生内閣あがき止まざり・・・・増原 淳子
 競うがに政治政界のあげつらうメディアマスコミ年暮れんとす・・・・山田美露鬼
 「朕オモウニ…」と教育勅語を暗誦したる遠き世代に核は無かりき・・・・山本 芳美
 戦いに過ごししことも今は昔うす曇る空より音もなく雪・・・・政兼 弘祐

 会員は古今短歌の第一人者西行法師の安浦にすぐれた名の秀歌を遺していることにかんがみ、毎年「西行月の大会」を催し、今年で第17回の会を重ね、毎年300首をこえる作品の出品があった。また主宰の豊田清史は「原爆の子の像と折り鶴の会」会長もつとめ、20年6月に、「アンネをしのぐ鶴を折って生きんとした禎子」の単行本を出版、同人の増原淳子は第2歌集「瑠璃しんしん」を刊行して日本歌人クラブ誌上でも好評を博した。なお、豊田は20年9月に井伏鱒二盗作の「黒い雨」資料と「ヒューマニズム戦争歌人渡辺直己」の資料500冊を広島大学へ寄贈した。


          かりん安芸の会

代表者 近藤 道子
連絡先 広島市東区戸坂くるめ木一丁目1−26  電話・FAX 082−229−4083

 馬場あき子を主幹とする結社誌「かりん」に毎月短歌10首を寄稿。支部報の「かりん安芸通信」を平成19年4月から平成21年3月の間に137号〜157号を発行。平成20年1月、支部長の砂本ひろ子氏御逝去により近藤道子が後任。現在会員22名。
 歌会は毎月第4日曜日午後1時半から5時まで、袋町の「広島市まちづくり市民交流プラザ」に於いて開かれ、少人数ながらも個性を尊重して忌憚のない意見が交わされる。他にかりん全国大会への参加(平成21年は静岡県焼津)や各種短歌大会に参加。平成19年度は広島市文化協会文芸部の企画展「掘り起こす広島の文学」に参加協力した。15周年記念に東京より松村由利子氏をお迎えして講演会と歌会を実施。
 話題となった作品を紹介する(広島県在住会員)

今日よりは失いし人と思いても少し猫背に前を行く見ゆ・・・・奥本 淳恵
父が逝き友逝く冬のさびしさよどこにもゆくなわが傘の雪・・・・近藤 道子
甘酒ができたとハウスのレストラン皆いそいそと行く古き世恋いて・・・・義志 博子
骨きしむか今日も痛みに臥す君と部屋ごもりいて春疾風の音・・・・三原 豪之
夏霧に馬洗ふ人草色の帽子に遠きフィデロ・カストロ・・・・河本惠津子
これやこの九番出口出られぬまま永田町駅のホームに迷う・・・・西 美代子
閉ざしたる心のような石壁(せきへき)に声かけ石工(いしく)は鑿を打ち込む・・・・河崎 典子
ましぐらの短き一生だったぞなのぼさんと遊べば夕陽かたぶく・・・・丸岡 育枝
もぎたてのりんごをひとつそっと置く後部座席の冷気の中に・・・・古家八千代
被爆後のある日盛装のスカートに下駄履く母のモノクロ写真・・・・森本 直美
勝つまでは欲しがりませんと堪えし身をいま一様に後期と付さる・・・・森下 ちこ
母の声母の仕草を忘るるためホームの母に日々会いにゆく・・・・正籐 陽子
青い地球を「かぐや」のレンズは映し出す豪雨も戦火もなにも見えない・・・・伊藤美枝子
人込みにまぎれて癒すわが身なれ見知らぬ人と人の谷間で・・・・大田 洋子
さびしさは驟雨ののちにきたりけり敷石は湯気立ちのぼらせて・・・・谷口 孝子


          原点短歌会

代表者 廿日出 富貴子
連絡先 広島市安芸区船越南二丁目2−5−20−203  電話 082−823−0685

 「原点短歌会」は毎月第3月曜日の1時から4時まで、広島市中央公民館で歌会を開き、2首ずつ提出した歌について忌憚のない歌評や質問、意見交換を行い、各自が納得の出来る歌に仕上げていく。毎年3月には中央公民館合同フェスティバルに参加しているが、平成20年と21年の3月にも、各自が1首ずつ色紙や短冊に書いて展示した。会員は13名。大竹市、三次市、広島市から集まって来る。
 歌誌は年2回、春と秋に発刊し、平成19年4月から平成21年3月の間に149号から152号まで発刊し、通算152号となる。
 会員の作品から
 俎板の窪みて妻との50年 厨によろこぶ孫の縁談・・・・赤瀬 勝昭
 ショートステイに母入所させその後の自責と不安こもごもにくる・・・・圷  静香
 亡き母がわたしの瞼の縁にとまり娘の生みたる赤子をみをり・・・・大橋智恵子
 記(しる)されし平和の礎(いしじ)の伯父の名をいくたびも撫で手を合わせたり・・・・小笠原美智代
 五十歳を迎えし娘の気配りを素直に受くる仙台への旅・・・・奥田 許子
 車椅子の母につきそいたる日々を桜の花に逢うたび想う・・・・櫛  詠水
 うららかな古稀近き春ぐっさりと乳房うしなう 少しさびしい・・・・高亀 美子
 切なさを淋しさを語るすべもなし君なき庭にくちなしの花・・・・清水亀美恵
 米作り八十路すぎてもまだやれると来季の肥料早くも予約す・・・・谷川 信明
 雨の日をこもりて編めばいく条もの糸は次第に花となりゆく・・・・中川多津子
 今朝を咲く朝顔の花 ひい ふう み トマトの陰にも紫ひとつ・・・・廿日出富貴子
 雪かぶることも知らずにこの冬の野菜は畑に薹のたちゆく・・・・山田 育枝
 ふわふわと往きては返る木の葉蝶晩夏の庭に何忘れしや・・・・山田 羊三

 平成19年12月、会員廿日出富貴子が株式会社美研インターナショナルから、歌とエッセイで綴った歌文集『幸せなこと』を、平成21年2月には、大橋智恵子が青磁社から歌集『日下橋』をそれぞれ刊行した。


          コスモス短歌会広島支部

代表者 上野 隆紘 
連絡先 広島市佐伯区五日市中央1−5−29 宮本 君子 電話 082−924−3526

 白秋系、宮柊二創立「コスモス短歌会」(本部は東京)は平成20年度に55周年をむかえ結社誌は通巻682号になる。当短歌会はその広島県支部である。県下の会員は約60名。30代から90代まで共に集まり、毎月広島・福山・三次で歌会を開いている。毎月の歌会は支部会員相互の批評を主体とし、時に本部選者を講師として招き勉強会を開催している(最近の講師は、高野公彦・小島ゆかり・桑原正紀)。
 上野隆紘「被爆樹」、宮本君子「土用芽」が第52回と55回のコスモス「0先生賞」を受賞
 歌は「生の証明」であるという、理念のもとに会員一同、真摯に、そして心をやわらかく解き放ち自由に思いを詠むことをこころがけている。毎年秋に行う吟行バス旅行も会員同士の親睦や作歌意欲の良き刺激だ。昨年は高野町の林檎狩りと鬼の舌震を探訪した。
 被爆せしくろがね黐(もち)に彫られたる相合傘も高みに古ぶ・・・・上野 隆紘
 春立つとこころほのかに明るめり小面とりて冠りてもみむ・・・・川崎 千公
 隣町の住職さんはイケメンで引越ししたいと媼が笑ふ・・・・木戸 博恵
 ぼたん雪ふはふは降ればてのひらをくぼめて幼の赤き手が追ふ・・・・品田 洋子
 悪しき事のみにはあらずわが癌に家族の愛の身にふり注ぐ・・・・徳永 桂子
 八十五で初体験の林檎狩り高野林檎の蜜を味合ふ・・・・長田 芳江
 成らざりし恋も浪費も肯ひて人間「野口英世」伝読む・・・・平田 郁子
 水仙の花のかをりにおぼれさう根元の草を屈まりて引く・・・・古田 隆子
 五本指のソックスはじめて履くわれら転倒予防教室賑はし・・・・前保 和子
 魔女の声つくりて本を読みやるに「優しい声で」とをさな子が言ふ・・・・森山 宣子
 その衣装よく似合ふよと妻を誉め密かに期待す夕食の銚子・・・・山根 健介
 さくらさくら今年のさくらフィナーレは錦帯橋に花吹雪あぶ・・・・綿谷百合絵
 街棲みのこころなぐさめ比婆山のどんぐりどんぐり鉢に埋めたり・・・・宮本 君子
 いつでも、誰でも歌に興味を持つ人はみな仲間、コスモス短歌会は常に門戸を開き、初心の方を大歓迎致します。


          真樹社

代表者 山本 光珠
連絡先 広島市南区段原南二丁目7−13−5−803  電話・FAX 082−251−2082
Eメール shinju1930@clock.ocn.ne.jp

 平成19年4月から同21年3月に結社誌「真樹」を第78巻第4号から第80巻第3号まで発刊、後者で通巻909号。 新年号と8月号を増大号とするほかは月々ほぼ60ページ坦々と出したが模索もあり、会員の拠点としての充実を目指した。次は結社賞から。
 パレットに迷いしいろの濁りあり彼の日に伝えておけばよかった・・・・真樹賞  周藤  武
 この土に生れたるえにし守るべし如月の野が我を呼ぶ声・・・・年度賞  植野はる子
 教え子をさがしブラジルに来てみればさがしあつれどはや今は亡し・・・・山本康夫賞  f地 三郎
 歌誌「真樹」宝物とつねひめ持ちてさすらい生きし来し方あわれ・・・・真樹準賞  勝俣 孝司
 この道の一花一草枯れてゆくときも知りたり姑に付きて・・・・年度賞  松 絹代
 遠雷のややに近づき来る気はい山ごもりして読む古典籍・・・・山本康夫賞  竹山 晴夫
 〈広島平和希求号〉は多くが参加し体験の継承や現在の情勢への思いを作品化した。媒体として個々の考え方の多様さはそのままに、国を、地球を、支える一員としての真情を発信しようとするものである。
 あえて特集したのが20年8月号「豊田清史氏の偽りの検証」。その著作物、被爆地点の偽を指摘、10〜12月号では寄せられた資料により、その盗作や「原爆の子の像」をめぐる虚偽などをたどった(同氏の問題については広島市文化協会文芸部会・市立中央図書館共催の企画展(19年)、単行本(21年・共著)「掘り起こす広島の文芸―大正デモクラシーから終戦まで」でも山本が言及)。やまぬ虚言に「著作の検証は後世への責任」(12月号)と思い至っての言挙げである。
 短歌会等は年間を通じ処々で開かれた。公募・短歌大会等での会員の入選も多々あった。
 会員の歌集に石井庸代歌集『一握の塩』、滝沢韶一・由紀子合同歌集『鴛鴦』。
 創刊80周年(平成22年11月)を控え、まず21年1月に合同歌集『果樹林』(216名)を出版した(以上3書、真樹叢書)。
 『果樹林』の後記から―「…言立ては内面生活の客観化、内面客観を通して精神の向上を信じるものである。向上は知れているとしても、心の園にともる果実の照りをこそ明日への燭花とし、脚光を求めない。万巻の書にまつこと多きのみとしても、わが心を訪ね、真実の言葉を選ぶことによる魂の浄化は、特別の営為であるとして自己に帰ろうとする。才を競わず、ひとりびとり無限に豊かなるべき心の実りに恋う。…」


          草木短歌会広島支部

代表者 三浦 恭子
連絡先 広島市西区庚午中二丁目13−10  電話・FAX 082−271−8889

 「草木短歌会」(代表吉田和人)は神奈川県に本部を置き、平成19年4月から平成21年3月の間に歌誌「草木」を第74号から第97号まで発刊した。
 広島支部は「草木」創刊と共に発足、毎月第1金曜日に西区民文化センターに於て歌会を開き「新しい抒情空間の創造を目指す」ことを目標として、作品の相互批評を主とした方向で研鑽を積んでいる。
 月例とは別に、広島市を中心とした吟行会や親睦歌会で和を深める傍ら、草木全国大会などに出席して作品の向上に努めた。特筆すべきことは、この2年間に7名の入会があり、毎月の歌会の熱意が更に高まったことである。―新人作品7首―
 生れしより唯死に向かふ旅なれば道すがらアラビアの月を見ようよ・・・・福原 和彦
 亡き母の告別式に流したる「さくら貝の歌」母は聴きしか・・・・玉野 紘子
 人間の声に似てゐるチェロを抱き奏づる音色たましひの声・・・・河野千代子
 日に焼けし歩き遍路の若者はナイキのリュックを軽く背負へり・・・・実光 優華
 公務員われマグマの断片(かけら)宿しつつ歯車となり一日また終ふ・・・・玉浦 章平
 埋み火のなかなか消えず夜のしじまボジョレーのハーフ独り飲み切る・・・・上林美津子
 妹の書く一筆箋に萩咲きて抗癌剤の終り告げらる・・・・沖村 恵彌
 以下は各大会における入賞作品の一部である。
 草を食む麒麟に似たり磨り減りし入歯に母は青菜咀嚼す・・・・市民文芸 松井 公子
 碑をのぞむ朝の苑に葉牡丹の葉は葉を抱き地霊を抱く・・・・市民文芸 光原 桂子
 われの亡き里への帰省は淋しかろ娘のため老いの命惜しまな・・・・市民文芸 吉岡 節子
 給油活動は必要なのかと少女問う授業終えし後のわが保健室・・・・日本短歌大会 堀内 孝子
 村人の温泉ならむ食堂より常連の哄笑雪に広がる・・・・呉短歌大会 三刀屋安子
 小鰯は七度洗へば鯛の味と教へてくれし母も老いたり・・・・国民文化祭 児玉 三佳
 廢鶏のやうな響きに辞書に載るあな淋しもよ「後期高齢者」・・・・短詩型文芸大会 小山美恵子
 やはらかく白くなりしよ百年を使ひ続けし母の手のひら・・・・県民文化祭 高橋 洋子
 呑みこみの差は兎も角もシニアらのパソコン教室今日も賑はふ・・・・県民文化祭 赤尾 節子


          白炎短歌会

代表者 新田 隆義
連絡先 広島市安佐南区高取北一丁目36−32 新田方  電話 082−878−3677

 平成19年4月から平成21年3月の間に「白炎」161号から168号まで発刊。通巻45巻168号になる。この間の主な作品は
  淡く刷く秋天の雲古稀すぎて行雲流水の思い深まる・・・・三原 豪之
  川なかに橋脚おおきく立ち上がり橋を支える翼を伸ばす・・・・村上 耿志
  前後左右に降りくる雪の時間のなかを互みの背なかふとも淋しき・・・・百谷 和代
  五年後に身辺整理と思いつつ三度延ばして七十五歳・・・・原  哲夫
  春の雪こころして降れ 足萎えの母が一歩二歩の試歩する・・・・高野 和子
  馬を焼き人を焼きたる焼却炉移設されしも昼なお暗し・・・・田部 紀子
  佐保姫のながき眠りも覚めるべし群青の空ぼたん雪舞う・・・・玉津 富子
等であった。会員村上光江は
 はつ夏の草の千里にわれ放ち風の中なる一点となる
を始めとする過去10年間の作品360余首をまとめ個人歌集『風の中なる』を刊行。広島県歌人協会、平成20年度の優秀歌集に推薦され新鋭賞を受賞した。
 月例歌会は毎月第3日曜日の午後、舟入公民館で開催、原哲夫、村上耿志、村上光江が中心になって運営。毎回20数名が出席、活発に行われ500回を超えた。
  降るもよし晴れてなおよしひとり旅新しき地図リュックに入れる・・・・小川 尚子
  夕雲の錨のごとく降りてきて杜の鴉は夜を曳き寄す・・・・正藤 陽子
  二人乗り 母は風の楯だった坂でも負けずぐいぐい漕いで・・・・小田 優子
等が好評。恒例の合宿研究会は原哲夫指導のもと東広島市の白牡丹の酒蔵を見学、懇親を深めた。
 岩本幸久は平成21年NHK全国短歌大会で特選に入選。新田は平成19年度の県民文化祭で入賞した。
  影にさえつまずきそうな母なれば傘さしかける炎天の道・・・・特選(大島史洋選)  岩本 幸久
  安楽死を待ちてゐるのか用済みの案山子は畦に身をゆるめ臥す・・・・広島県知事賞  新田 隆義
 この他、各大会で三原豪之、高野和子、村上光江、正藤陽子、田部紀子ら会員の多くが入賞した。中野茂はこれまでに発行された会員の歌集を再検討、光を当てている。6月には創刊45周年、歌会500回を記念してシンポジウムによる記念大会を予定している。
 

          広島アララギ会

代表者 大本 弘志(会長)
連絡先 広島市佐伯区美鈴ケ丘東4−18−11  電話・FAX 082−928−1673
代表代行 和田 紀元(副会長)  広島市南区東本浦町21−32  電話 082−282−6678
FAX 082−282−6816  Eメール wadano@enjoy.ne.jp

 「広島アララギ会」は、全国組織「新アララギ」の一地方組織ですが、広島の会そのものが旧「アララギ」時代からの長い歴史を持つ短歌結社で、多くの著名歌人を輩出しています。「新アララギ」は毎月歌誌を発行し、「広島アララギ会」の会員も主な作品発表の場としています。「広島アララギ会」は月に一度歌会を実施していますが、毎年5月には広島特別歌会として、全国組織の選者を招き、また東京、関西、四国、九州など各地から多くの参加者を迎えています。逆に、全国歌会や各地の歌会にも積極的に広島から出掛けています。このように広島と全国は、密接な関係を保ちながら短歌の研鑽に励んでいますが、そればかりでなく、吟行により広島の短歌の由緒をめぐるなど、広島の短歌の歩み、人、作品やその背景の研究も行っています。

 本年の予定として、「広島アララギ会」独自の合同歌集の発行をすすめているところです。

 京の人は地名を上手につけてゐる女子大前の坂は女坂といふ・・・・柳川  清
 妻は何を編まむとせしか色々の毛糸の箱に編みかけを遺す・・・・大本 弘志
 弱音にて始まりし悲愴の一楽章涙ぐましくなりつつ聴けり・・・・藤原 俊彦


          広島県歌人協会

代表者 相原 由美(会長)
連絡先 事務局 広島市安佐北区安佐町飯室3978−2  溝口 須賀子方  電話 082−835−0372

 平成19年4月から21年3月までの間に、会報「うたびと」を106〜113号まで発行した。
 当会は県内在住者を主体に構成されていて、現在会員数は400名弱である。
 会報「うたびと」では、協会が主催または後援した短歌大会の報告や県内各地の会員の活動の記録、随筆などを掲載し、会員の相互研修、親睦を図っている。
 5年毎に合同歌集「律動」発行。来年度発行の第7集へ向け準備中である。
 また、若い世代への短歌の継承を目指して「ヤング短歌募集」をして投稿を募っている。今回で12回目となった。応募総数2431首、「うたびと」113号でその特集を組み表彰をした。
 主催する短歌大会は春・秋の2回。春は協会の会長・副会長が選歌、選評の任に当たり、秋は2年前から招聘している歌人により講演、選歌、選評が行われている。19年春の短歌大会の選者は原哲夫、伊藤玲子、溝口須賀子、三原豪之の4氏。
  颯そうと病院・買い物・短歌会 意のまま動くわが電動車・・・・(大会賞)平岡アヤメ
 19年秋の短歌大会は10月7日、広島市西区民文化センターで開催され「プチ★モンド」の松平盟子氏による講演「現代短歌の前線」があった。
  千年桜のそばに小さき墓ならび落花を浴びて傾ぎゆくなり・・・・(大会賞)出原 知恵
 20年春の短歌大会の選者は前年春の大会に同じ。
  たたまれしままに置かるる車椅子春くれば母を乗せて花見ん・・・・(大会賞)多賀 陽美
 20年秋の短歌大会は、10月5日、「音」の玉井清弘氏による講演「短歌表現の工夫」があった。
  帰りたいと淡く4文字の書かれいて亡父の日記はそれより余白・・・・(大会賞)吉岡 初枝
 また県内各地で年間2回の協会後援によるミニ交流会が行われている。
 県内各地の短歌大会も後援した。2箇所のみ挙げる。
第24回宮島全国短歌大会(小島ゆかり講師)
  半切りの秋の南京を抉るとき湖底にありし村あらはるる・・・・(広島県知事賞)伊藤 美枝子
けんみん文化祭(相原由美・三浦恭子・三原豪之)選
  折鶴の嘴きっちり折り終えし「水ヲイッパイ飲ンデクダサイ」・・・・(広島県知事賞)精舎 悦子
 なお、協会有志の吟行会の作品が『原爆遺跡を詠む』と題され出版された。恒例の出版歌集表彰は次の通り。
平成19年歌人協会奨励賞多賀陽美歌集『弧を描く星』
平成20年歌人協会奨励賞山田忠義歌集『天鼓』
 

          広島女性短歌会

代表者 高野 和子
連絡先 広島市安佐南区西原二丁目36−12−6

 平成19年4月から21年3月迄の間に新会員2名が加わり、会員数36名が共に作歌とその研究に励んだ。その内容を簡記すると次のとおりである。
 19年12月に合同歌集「ひびき」6号を発刊、34名が各10首を出詠した。
 20年6月に特別歌会を開催、全国結社「草木」の選者である三浦恭子氏を講師に招き「境涯詠を考える」と題しての歌話を聴講、島田修二の世界を勉強した。
 19年11月、広島市文化協会の行事に参画、「掘り起こす広島の文芸―大正デモクラシーから終戦まで」と題し、山隅衛、岡本明、山本康夫の3氏が残した作品を研究、その成果を中央図書館のロビーに展示・公開した。21年2月、会員の大橋智恵子は第3歌集「日下橋」を出版した。
 その他2年間における会員の各大会に出詠した優秀作品を記しておく。
 展示茶碗に触れるなと老い母に告げのちのさびしさ母にわたしに・・・・河本 恵津子
 子の重み知らず過ぎ来しわが腕に四肢やはらかに委ねゐる猫・・・・新名 敏子
 添ひてより長き年経る今にしてあなたがふつとわからなくなる・・・・小川 尚子
 ふるさとの蛇円太鼓が故郷をまるごと連れてパレードにいる・・・・是高 真佐子
 唐突に昔の友が来たやうに曼珠沙華咲く彼岸中日・・・・檜垣 宏子
 ひな飾り作り届けむ孫ありて老いづく日々の光源となる・・・・水野 征子
 おまえのための海になろうという文にわたしの鱗が息吹き返す・・・・伊藤 八千代
 針山に針整然と刺されゐて亡きのちも母に諭されてゐつ・・・・城東 つきよ
 やはらかく白くなりしよ百年を使ひ続けし母の手のひら・・・・高橋 洋子
 八月のアオギリ二世何を告ぐか葉裏に言葉のやうな傷あり・・・・中村 公子
 ひざまずき原爆死没者名簿に風とおす白き手袋 また夏がくる・・・・上條 節子
 上條の作品は、雑誌「短歌」の創刊55年を記念して創設された「角川全国短歌大賞」に8054首の中から選ばれた作品であり、朝日新聞に掲載された。その他、高野和子は20年末に開催された、けんみん文化祭ひろしまの「現代詩部門」に詩を発表、県知事賞を受賞した。大田玲子は福山地区を中心に広く短歌の指導者として力を発揮した。
  

          広島未来短歌会

代表者 城東 つきよ
連絡先 広島市安佐北区あさひが丘四丁目10−9  電話 082−838−1781

 平成19年4月から平成21年3月の間に、歌誌「未来」を25号まで発刊、通巻686号になる。
 「未来」掲載の主な会員の作品は次の通り。
 カーテンをひらく音さえそうだった重ねることを暮らしと言えば・・・・緒川  凛
 指のように焼き色がつくウインナーぱくりと裂けておそろしくなる・・・・紙村 一味
 初雪かづら去年を愛でしよ年明けてほどよき色に紅葉しにけり・・・・児玉 日出子
 若者の心が読めず叱られるシルバー男はうつむきており・・・・先村 義之
 またふかく空にしづみてぎんいろのすじをひきたる星をつかめば・・・・杉田 加代子
 ショートステイに夫を預け母を看る容赦もあらず今宵の雪は・・・・城谷 栄子
 ひとはみな時のたび人約束も風のまにまにはかなくなりて・・・・城東 つきよ
 フェルトのファッション帽は服と靴とトータルよろし遠き日のこと・・・・津谷 美恵子
 いつ知らず世代交代しておりぬ息子ま中に相談事は・・・・村上 園子
 教えようとして口ごもる戦争はきみみたいな小さな子も殺される・・・・野樹 かずみ
 おだやかな山の峰でも兵役の通知得しとき尖りし角度・・・・吉光 義雄
 2.5リットル入りステンレスケトル買いて知る柳宗理というデザイナーの名前  三田 恵子
  第25回宮島全国短歌大会広島県知事賞
 さくらばな呼び合うように散りゆきてひとひらひとひらその影に添う・・・・緒川  凛
 20年10月4日に広島市東区民文化センターにおいて彗星集と合同にて加藤治郎選者を講師として特別歌会を行った。歌会に先立ち、宇品海岸にある近藤芳美先生の歌碑に花束を供え全員で祈りを捧げた。講演のテーマは「近藤芳美を読む 思想と相聞」生活への細やかな目の大切さなど教えられることであった。
 陸軍桟橋とここを呼ばれて還らぬ死に兵ら発ちにき記憶をば継げ  近藤 芳美
 建立当時と光景を全く変えた四囲にとめどない往時への感慨に胸があつくなるのであった。


          りとむ短歌会広島

代表者 白川 朝子
連絡先 廿日市市峰高二丁目2−25  電話 0829−39−0071

 「りとむ短歌会」(三枝ミ之・今野寿美両氏主宰)は、川崎市に本部を置く。平成19年4月から平成21年3月の間に、歌誌『りとむ』第90号から第101号までが発刊された。百号は平成21年1月に記念号として発行。題詠〈百〉に堀越照月の「百円に満たない額で届く文淋しさ一杯書きつらねても」が第3席に選ばれた。
 毎月1回歌会を開催。作品の批評・鑑賞の他、歌集研究も行った。その他、次のような活動をした。
○第13回与謝野晶子短歌文学賞(平成19年6月、於サンクリスタル高松)
 河野裕子氏選 入選
  草の辺に忘れし手袋解きおれば繭ごもる虫のぴくりと動く・・・・末森 知子
 篠 弘氏選 入選
  東京女高師の歴史たどれば”詠歌”とう科目に出会う何か嬉しき・・・・白川 朝子
○第93回呉短歌大会(平成19年11月、於ビュー・ポートくれ)
 @今野寿美氏の講演「花を買ひ来て妻としたしむ―短歌表現の具体性をめぐって―」を聴く。
 A中国新聞社賞受賞
  慰霊式のはじまる前のかなしみのマイクは蝉の鳴く声捉う・・・・末森 知子
○末森知子歌集『花粉化石』の合評会並びにりとむ岩国との合同歌会(今野寿美氏をお迎えして 平成19年11月、於広島ガーデンパレス)
○りとむ百号記念歌会・祝賀会(平成21年2月、於東京八重洲富士屋ホテル)
○三枝ミ之氏の講演「魅力的な短歌の作り方」を聴く。(平成21年3月、於シンフォニア岩国)
○りとむ岩国と合同吟行会(三枝ミ之氏をお迎えして 平成21年3月、山口県神津島回天記念館に)
 この2年間、歌誌『りとむ』の「前号作品を読む」に取り上げられた会員の作品から1首ずつを記す。
  クロゼットの亡父(きみ)の洋服ふと沁みる夢の欠片のやうに吊られて・・・・青野  蘭
  自画像の眉間にたゆたふくらき翳 群をはなれし老鳥よりさびし・・・・佐久間千沙子
  2008年8月6日、93冊の原爆死没者名簿収まる・・・・末森 知子
  大筆に墨ふふませてひと息に命と一文字書初めとする・・・・ 堀越 照月
  炉に掛かる南部鉄瓶愛でおればほろりと炭火の灰が崩れる・・・・白川 朝子
 
 


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