東区民文化センター舞台芸術促進事業
     
公演は終了しました。ご来場いただきました皆さま、ありがとうございました。
 
     

 
     
輸送トラックが行き交う、国道9号線沿いの町「大栄町」。昭和の高度成長期に土木利権によって興ったその町も、現在、長引く不況に人々はあえいでいた。
ある日、大栄町に大川祐吉が帰ってくる。
人々は驚いた。なぜなら、かつて大火の疑いをかけて町を追い出したあの”ビンボーのユーキチ”が、二十年経った今、立派な実業家となって帰還したからだ。
人々は訝しむ。しかし、祐吉は恨み言を口にすることなく、町おこしに着手しはじめる。やがて、彼のすぐれた商いの手腕によって町が再興の兆しを見せると、人々は彼の高い志を受け入れ、過去の嫌疑を侘びた。そればかりか、彼を尊び、敬うようになった。
そうして長年祐吉を悩ませていたトラウマは終了した。彼はいたく満足した。
一寸の狂いなく、すべてのもくろみが成功した。


阪本麻紀  桑折現  崎田ゆかり  澤村一間  柏木俊彦(第0楽章) 今井美佐穂 (第0楽章)
脚本・演出:柳沼昭徳
音楽:山崎昭典、中川裕貴( N.O.N、swimm)
 
     
日時
   2013年3月30日(土) 14:00~19:00~
   2013年3月31日(日)
 14:00~
   2013年3月31日(日) 18:00~ 追加公演決定!

※予定しておりました公演の前売・予約は予定数を終了しました。なお、追加公演として3月31日(日)18時開演をご用意いたしました。
  当日券は若干数発売いたしますが、お座席に限りがございますので、ご入場をお断りする場合がございます。
  是非、追加公演31日(日)18時開演をご利用下さいませ!!


    ※ 受付開始は開演の45分前、開場は開演の30分前です。
    ※ 演出の都合上、開演後はご入場をお待ちいただく場合がございます。
    ※ 未就学児童の入場はご遠慮いただいております。


  ★印が、アフタートーク 詳細はコチラ
  
会場
  
広島市東区民文化センター・スタジオ2
 
料金
  一般 2,500円  大学生以下 2,000円  ※当日は500円増、日時指定、全席自由
   

主催
  財団法人広島市未来都市創造財団 東区民文化センター
  烏丸ストロークロック http://karasuma69.org/
  舞台芸術制作室 無色透明 http://musyoku-toumei.jimdo.com/
 
      烏丸ストロークロック http://karasuma69.org

1999年京都で旗揚げした、小劇場演劇を手がける劇団。
現代人とその社会が抱えている葛藤をモチーフにした作品を京都はじめ各地で発表している。「演劇(舞台)でしか表現できない」作品作りをポリシーに、多作を消費的に発表するのではなく、一つのコンセプト・題材を用いた小作品の発表を数年に渡っておこない、その後一つの分厚く上質な作品へと昇華させる創作形態をとっている。2 0 0 1 年「CAMPUSCUP2011」大賞受賞、2003年「Kyoto演劇大賞」大賞受賞。繊細で丁寧な作品作りが評価されている。



柳沼昭徳率いる烏丸ストロークロックは実に実直に、骨太に演劇と向き合っていると感じる。私が烏丸ストロークロックと出会ったのは、2009年1月の演劇試演会C.T.T.名古屋セレクションだった。素舞台に地明かりのみのシンプルな舞台で繰り広げられた、どこか物悲しいストーリーと俳優の確かな力量に、私はすっかり惹きこまれた。そして私の惹かれるものが何かを『漂泊の家~八月、鳩は還るか~』『仇野の露』の2作品ではっきりと自覚した。
柳沼の創作意欲を湧き立たせる源は、私が想像するに、現代に生きる私たちがややもすると忘れがちな、それでいてふとした時に心をざわつかせる普遍的な衝動だと感じる。漠然とした不安感とでも言おうか、それは生きる儚さであったり、人を愛するということであったり、人は必ず死ぬということであったり…。柳沼作品に登場する人物たちは、皆悲しい過去や暗い影を持っている。そして舞台設定が極めて綿密で、高度経済成長時代に建てられ今は廃墟となりつつある集合団地や、過疎地で共同生活する集落など、私たちの記憶の片隅にある風景や体験と巧みにオーバーラップさせることで、目の前の芝居を観ながらつい自分自身の遠い記憶を蘇らせることに効果を発揮している。京都の地場の持つ力が影響しているのか、どこか儚げで無常観を漂わせながら、実のところ人間愛に溢れた柳沼の世界観と、それをアートに昇華させるまでのじっくりと時間をかけた丁寧な作業の繰り返し、この2つの要素が烏丸ストロークロック作品の持つ圧倒的な強度だと思う。
蛇足であるが、私は中学生の頃から弘兼憲史のマンガ「人間交差点」の愛読者で全巻網羅している。この作品の赤裸々な人間模様はどこか柳沼の世界観と相通じるものを感じているが、柳沼さんは読んだことがないらしい。 

松浦茂之 三重県文化会館 事業推進グループ グループリーダー



「短編集:仇野の露」では、描かれる現代の人々の息づかい、同じ「息苦しさ」でも年代や性別で、かくも違うということを、日常の中に起こる小さな狭間を積み重ね、見事に描き分けた佳作だった。
今回の作品は、「短編集:仇野の露」を進化させ、深化した作品になるという。烏丸ストロークロックの世界には欠かせない生演奏のギターやチェロと共に、作品からにじみ出る深い問いかけを反芻する時が再びやってくるのだと思う。

油田 晃 NPO法人パフォーミングアーツネットワークみえ 代表理事、津あけぼの座・津あけぼの座スクエア プログラムディレクター



彼らが見つめる、ある人々の「日常」。
日常を切り取ったかのような「リアル」ではない。そう錯覚させる質感がある。無駄なものが省かれて、センス良く整理されて、生きるあたりまえさ、どうしようもなさがシンプルな舞台に浮かびあがる。泥臭くはなく、品があって美しい。そして、その美しさの中に希望のようなものを感じる。

杉山 準 NPO劇研[京都] 演劇プロデューサー



「仇野の露」で出会って惚れた。私のための劇だと骨身にしみた。
3組の夫婦の踏み外していくさまが、すべて自分の顛末に思えた。
静謐で美しい沼のような作風だった。だが水には毒が、底には冷血の魔物がいる。緻密に静穏と閑寂を装って人を誘う。
ああそっか今気付いた! あれは柳沼さんの沼なのか。
泥が足元にとり憑いて残る。ぽとりぽとりと、今も。
で、路肩に垂らしながら待ってしまう。「国道、業火、背高泡立草」。
なんてセクシーな題だろう! 私が今一番焦がれる作家の新作だ。

角ひろみ 劇作家・演出家