脚本／井上ひさし 演出／鏑木悟道

太平洋戦争開戦前夜。浅草のどこかにこの一家はいました、たしかに、たしかに…。唇に歌を。心に夢を。

　昭和15年の浅草。小さな小さなレコード店に、4人の家族と、2人の間借人が仲良く暮らしていた。しかしこの平和なオデオン堂に大事件が起こる。陸軍に入隊していた長男の正一が、脱走したというのだ。「敵前逃亡」は重罰。すぐさま追手がかかって、憲兵伍長「蝮の権藤」がオデオン堂に乗り込んできた。
　 さらにもう1人、傷痍軍人の男が家族に加わる。長女みさをが「ハガキの山から選んだ」夫、源次郎。この家の住人たちのジャズがかった音楽好きが、堅物の愛国主義者の源次郎にはどうしても許しがたい。　
こうしてオデオン堂には、ときならぬ大嵐がふきあれることとなる。